春は始まりを告げ出会う


今にも白くなってしまいそうな薄い水色の空が
少しずつ青色に戻り始め、木々や生き物を眠らせていた
冷たい風が太陽の光に温められ眠りについていたモノ達を起こし、
世界に色が付き始め至る所に命の温かさを感じる

季節新年を向かえ新しい人々が一歩上に上がる
この時期は、新しい場所に行き、初めての事を多く
体験する人々が出てくる。


「お父さんココが私達の家?」

大きなトラックの助手席から降り、目の前に建っている家を
見上げ横に立っているであろう人物に声をかけると
すぐさま低い声で返事が帰ってきた。

「あぁ、そうだ。これからはこの家で生活するんだぞ。
 さぁ、母さんの手伝いをしてやれ」

家を見上げているままのに家の中で、
引越業者と打ち合わせをしている、母親の元に行く様に促すと
は元気良く走り玄関を潜り家の中に入って行った。

荷物を持った業者の邪魔にならない様に廊下を進んで行くと、
リビングで業者と話をしている母を見付け、声を掛けながら
リビングへと入って行った。

「お母さん!何か手伝う事ある?」

の声を聞いた、母親が振り向き

「ここはいいから、の部屋を片付けてらっしゃい」

「もう、入っても良いの?」

「大きな荷物は運び終わっているから、もう入ってもいいわよ」

「本当に!?じゃあ、後は本とか並べれば完成なんだね!」

「そうよ」

「よし。急いで片付けてお母さんの手伝いするから待っててね」

幼さは入った無邪気な笑顔で言葉を言うと、身体を回転させ
先ほどと同じ出入り口から、走って出て行くと勢い良く階段を上り
何個かある扉の内の一番奥にある扉を開け中に入って行くと、
窓が二箇所あり1つは出窓、もう一つはごく普通の窓が目に入ってきた。

フローリングの室内にはベットとタンスに無造作に積み上げられたダンボール
それに出窓近くに机が置いてあった。

「まずは、ダンボールの開封だよねぇ・・・」

積み上げられたダンボールの一番上から開封して行く。

服、小物、教科書、次から出てくる荷物を見ながら
どういう順番で片付けをしてゆこうか
考えながら一つ一つダンボールの開封と確認を
してゆく。

「まずは、本棚からしょうかなぁ・・・・」

ダンボールから出てきた本を数冊持ち、壁際に置いてある
本棚に大きさ、種類などを確認しながら並べいく。

「教科書はあっち・・・この本はココで・・・・・・・・・・」

大半の荷物だった本を、本棚に並べ終わると、自然に
机に上も整頓された。

「次は服だよね」

箱の中から一枚一枚確認し、引き出しの中に入れ、
コートや制服は上段にシワが付かない様にハンガーに
掛け、しまい込んだ。

残った箱の中から小物を取り出しバランス良く置き
時計をかけ、最後に写真を飾り、片付けは終了した。

「完成・・・・気に入らなかったら、明日にでも模様替え
 すれば良いよね」

物が置かれた事で先ほどまで無かった生活感が出始め
自分じゃない誰かが入っても違和感を感じず腰を
下ろしてくれる部屋になった。

「次はお母さんの手伝いをしなきゃ」

出来上がった部屋を見渡していると、下から話し声が
聞こえ、まだ、引越しが出来上がってない事が解り、
独り言を言うと、急いで部屋を出て、下に向かった。

早足で話し声がするリビングに向うと、ソコには
業者の人はおらず、片付けられた部屋には
両親と見たことも無い夫婦が楽しそうに会話しながら
お茶を飲んでいた。

「あら、片付けは終ったの?

の足音に気付き、出入り口を視界に入れていた
母親が、がリビングに入ってきた瞬間に声をかけ
ソファに座る様に促し、が座るの確認した父親が
に、向かい側に穏やかに座っている夫婦の
紹介をしてくれた。

「こちらはお隣の功刀さん。引越しに手伝いを
 してくれたんだ」

父親が功刀夫婦の紹介の話が終わると
今度は自分の紹介をした。

「先ほどお話をしました、末っ子のです」

「初めまして、です」

父親の言葉に釣られる様に、自分の名前を
言いながら、軽く頭を下げた。

ちゃんは、今年中学生なんですってね」

自身の紹介が気に入ったのか、目の前に
いる女性が話しかけてきた。

「はい」

「おばさんの息子も中学生なのよ」

「そうなんですか!?」

「えぇ。と、言っても中2なんだけどね」

引っ越してきて、学校に行くまで同じ学校に通う
人達と話す事はない。
と、思い込んでいたは、目の前にいるおばさんの
話に驚き、先ほどの挨拶の時より大きな声を出したが
話当てのおばさんも、話を聞いていた人達も驚く事無く
達の会話に耳を傾けけた。

「では、先輩なんですね」

「そうなるわねぇ。目付きのキツイて無口で無愛想な
 息子なのよ」

「えっと・・・・・」

見た事の無い、人の事を言われ
どう返事を返して良いのか解らず困っていると

「まぁ、こんな息子だからよろしくね。ちゃん」

の困っているのを愉しむかのように、笑いながら
言うと、は慌てて返事を返した。

「いえ、こちらこそ宜しくお願いします」

挨拶同様、言い終わると頭を下げると
今度は男性特有の低い声の言葉が聞こえた。

「何か困った事があったら一に言いといい
 あれでも男だから頼れるだろうし」

「はい」

頼るといい
との言葉に、は深く頷くと
再び、女性の声が響いた。

「もし宜しかったら、我が家に夕食を食べに来て下さい」

いきなりの言葉に両親が戸惑い、断りを入れようとするが

「長時間の移動と朝からの引越し作業でしたでしょ
 お疲れになっていると思って、
 勝手ながら夕食の準備をしてきたのです」

「ですが、まだ知り合ったばかりですので・・・・」

「では、お互いの交流を深めるという事で」

女性の話に断りを入れかけると、
横にいた男性が案を出し話しに加わった。

「それでしたら、お言葉に甘えさせて頂きます」

父親も男性に案に頷くと、前に座っていた夫婦は
嬉しそうに顔を見合わせ、
では早速、我が家に移動しましょう
と、促し隣の家に移動する事になった。

案内され、通されたリビングのソファーに座る様に
言われ腰かけると、女性がキッチンから飲み物を
運んできた。

ちゃんはジュースで良かったかしら?」

手渡されたコップにはオレンジュースが入っていた。

「はい。ありがとう御座います」

直接受け取り、一口飲み込むと女性2人が
キッチンに立っていた。

なんだか1人座っているのは悪い気がし
ソファーから立ち上がり、キッチンに向かい
歩いて行くと

ちゃん、直ぐに出来上がるから
 おじさん達と待ってて」

女性の言葉で立ち止まり、どうすれば良いのか
解らず、母親を見ると穏やかな笑顔で頷きいた。

戻って座っていなさい。

動きだけの言葉に従い、父親の横に座り
2人の話に耳を傾けていると
遠くから言葉が聞こえ、次に足音が聞こえ
しばらくすると、廊下とリビングの間にある
ドアが開き、帽子を被った少年が入ってきた。

「おかえり一。今日は練習早よ終ったんや」

「そや」

キッチンにいたおばさんが少年を出迎え
話をしている風景を見ていると
いきなり名前を呼ばれた。

ちゃん。この子が息子の一
 さっき、おばさんが言った通りでしょう」

かけられた言葉に頷く事も出来ず少年を
見ていると、なんだかニラまれている様に見え
慌てて挨拶をする。

「今日、東京から引っ越して来ました風祭です」

今日何度目がのお辞儀をし、再び少年の顔を見るが
先ほどと変わっておらず、ナニか悪い所があったのか
と焦り出すと

「気にしないでちゃん。一の目付きと
 無愛想なのが悪いんだから」

おばさんの気遣いの言葉にも頷けず
ただ、少年の顔を見ていると
ソファーの方から言葉が掛けられた。

「一も帰って来た事だし夕食にしないか」

「そうね。すぐに準備するわ」

功刀夫婦の会話で、すぐさま夕食となり
両親は楽しく会話をしていたのだが
子供達には会話はなく、無言での食事となった。

両親の楽しい雰囲気とは違って、なんだか重い空気が
流れ、耐え切れなくなったが目の前にいる
少年に言葉をかけた。

「あの、クラブか何かなさっているのですか?」

の言葉に動かしていた箸を止め、下を向いていた
視線を上に上げを捕らえると

「サッカーをしとった」

と、一言返ってきた。

「サッカーですか?どこの守備をなさっているんですか?」

返された言葉にすぐさま言葉を返す

「どこって、サッカーの事知っとるんか?」

「はい。兄がサッカーをしてるので少しの事なら解ります」

「兄?」

「2番目の兄が武蔵森と言う学校でサッカーを
 しているんです」

「武蔵森」

学校名を出した瞬間、怒ったのか、先ほどより
低い声で呟くが、はかまわず話を続けた。

「はい。まだ3軍なのですが・・・・・・」

「そげん下なんか?」

「はい、受験してサッカー部に入るらしいのですが
 サッカー推薦でないとレギュラーにはなれないらしい
 です・・・・・・・・・・・」

あんなに頑張って勉強してサッカー部に入ったのに
ボールも蹴れないなんで・・・・・

「上手ければ上に行く、そげん心配せんでも良かやろ」

話している内に兄の事が心配になり、前にいた一から
視線外し俯いていると
言葉がかけられ、慌てて顔を上げ目の前の一を見ると
表情は先ほどと変わっていなかったが
目が大丈夫だと言っているかの強い目だった。

「そうですよね。将は強いから大丈夫ですよね」

一の言葉を借り、自分の言葉に自分自身言い聞かせ
一に言葉をかけた。

「先輩は優しいですね」

「そげん事なか」

怒っている様に見えるけど、もしかしたら
テレているのかなぁ?

話をし少しづつだが一の事が解った様な気がしてきた。
もっと話がしたかったが、タイミング良く
両親達の話にも区切りが付いたらしく
帰る事になってしまった。

功刀一家に見送って貰い玄関でクツを履き
ごちそうさま、お邪魔しました。
と、挨拶をし別れ家に戻り昼間片付けた自室に
入り、将に手紙を書こうと机に座り書く事をまとめていると
下から
お風呂に入りなさい
と、声をかけられ手紙書きを一時中断し、タンスから
パジャマを持ってお風呂に向った。

お風呂から上がり、カーテンを閉めようと
ベットの上に乗り、カーテンを掴むと
向かいの部屋の明かりが付き、窓に人影が映ると
思わず大声を出した。

「先輩!?」

あまりにも大きな声だったのか、向かいの部屋の
窓が開き一が声をかけてきた。

「そげん所で、なんばしよっとね」

一が窓を開け、声をかけているのか
窓の閉まっているには届かず一の口パクの
姿が見え、急いで窓を開け

「先輩そこで何をしているんですか?」

一が質問した言葉がソックリこのまま返され
ため息交じりで一が答えを返した。

「ココは俺の部屋じゃ」

一の答えにもすぐさま言葉を口にした

「ココ私の部屋なんです!そっか、
 そこは先輩の部屋なんですねぇ、いきなり先輩の
 姿が見えたからビックリしました」

「そげん事で大声ば出しよったんか?」

「はい。本当にビックリしたんですよ」

「驚きは終ったか」

「はい。疑問も解決してすっきりしました」

「じゃ、寝ろ。」

「解りました。先輩おやすみないさい」

「おう」

お互い、同じタイミングで窓を閉めカギを掛け
カーテンを引いた。

これも、手紙に書かなくちゃ!

引っ越して、色々不安があった。
でも、今は全然ない。
お隣の家族はいい人だ。
先輩は優しい人。

今日合った事を細かく書くと封をして
机の真ん中に置いた。

明日の朝投函すれば明後日には付くはず。

お互い、離れていても寂しく無い様にと
東京を離れる時に約束をした。

毎日は無理だけど、一週間に1度文字だけでも
会える様にと・・・・・

明日はこの当たりに何があるのか探検してみょう!
絶対、良い事がある!